webデザイナーが印刷物を扱うときに気をつけたいポイント




こんにちは、プロクラスの和方です!

私は普段web制作をメインに行っているのですが、以前に紙媒体の広告制作会社で働いていたことがありました。
webと紙媒体では特にデザインデータの扱いにおいて違う部分があり、今回は「webデザイナーとして働いているけど紙媒体でのデザインも行いたい、または行う予定だ」という方向けに両者の違いについて記事を書いてみたいと思います。

CMYKが再現できる色が違う

以前こちらのブログで「カラーチャンネルクイズ」という記事を書き、RGB編CMYK編の2回で光と色の三原色について触れました。
そこでは詳しく触れていませんでしたが、RGBとCMYKには色の領域(色空間・カラースペース)に大きな違いがあります。
よくIllustratorなどで、カラーモードがRGBのデータをCMYKに変換したときに「色がくすんでしまった…」という経験はないでしょうか?
IllustratorやPhotoshopはカラーモードごとに表現できる色をプレビューしているのですが、RGBに比べてCMYKは再現できる色の領域が狭いため、結果としてCMYKの方が色がくすんでしまいます。

画像の劣化

図1のようにマゼンタやシアンなどの鮮やかな色は特に顕著に劣化が起こってしまいます。

色度図

図2はRGBとCMYKそれぞれが再現できる色域を線で示しています。
CMYKでは表現できる領域がRGBよりも狭いことが分かるかと思います。

画像の解像度が違う

解像度とは画素の密度のことで、解像度が高いほど画像が鮮明になります。
よくPhotoshopで画像を書き出す際にdpiを指定するかと思いますが、こちらもwebに使用する画像と印刷で使用する画像の違いを意識する必要があります。
以前はwebに使用する画像は72dpiで作成されていましたが、最近ではモニターの解像度も上がってきていますので、150まで画素を上げた画像を使うことも多いかと思います。

dpi比較

dpiは1インチ(=25.4mm)四方の中に入る画素の数です。
図3は1インチ四方の同じ画像を72dpiと300dpiで書き出して拡大したものです。
印刷に適した解像度は300dpi以上で作成することが良いとされています。

黒の再現に気を付ける

webデザインで黒を使う際はカラーコードの#000000に設定している方が少なくないと思います。
実は印刷物で黒を再現する際は、①CMYKのK(Key plate、黒、墨)を100%で出力する方法と、②CMYKをミックスする方法の2種類があります。
両者にはどちらもメリットデメリットがありますのでご紹介したいと思います。

①K(Key plate、黒、墨)を100%で出力する方法

通称「スミベタ」と呼ばれ、CMYKのK(Key plate、黒、墨)のみを100%着色することで黒を表現する方法です。
後ほど紹介するリッチブラックに比べ混色をしないので版ずれ(多色印刷の影響でインクがズレる現象)が起こりづらくなるため、小さい文字などが細かい部分が綺麗に印刷されます。
しかし、インクの色に直接影響されるので「思ったような黒ではない…」といったことになりやすいデメリットがあります。

②CMYKをミックスして再現する方法

通称「リッチブラック」と呼ばれ、Kに加えてCMYを混色することで再現される黒のことです。
前述したスミベタに比べて綺麗な黒を再現することができますが、版ずれが起こりやすく繊細な表現には注意が必要です。

黒を比較

図4は①と②の黒を実際にコピー用紙に出力し、蛍光灯の明かりに透かしたものです。
①のスミベタに比べて②のリッチブラックの方がしっかりと濃い黒が出ています。
画像のように広い面積を塗る場合にはリッチブラックの方が向いているとされています。

以上のように、印刷物で使用する黒は用途に応じて使い分けていただくのがおすすめです。
もちろん技術の進歩により双方のデメリットが解消されているかとは思いますが、印刷の環境に左右されることはまだまだ否定できませんので、知っておくと役に立つ内容かと思います。


いかがだったでしょうか?
普段何気なくweb用に作成したデザインや画像を印刷で使用する方もいらっしゃると思いますが、今回ご紹介したポイントを押さえておくだけでよりクオリティの高い印刷物を作成することができると思いますので、ぜひ今後の制作に役立てていただければと思います!